読み物・お知らせ
2021.08.01

「雑」であること

もう十年前くらいになります。地元の飯田市で元・朝日新聞の編集委員の故・辰濃和男さんの講演会に行ったことがあります。辰濃さんは長年にわたりコラム「天声人語」を担当されていた一流の書き手です。講演会の最後の質問コーナーで、私は辰濃さんに聞きました。「良い文章を書く秘訣 を教えてください。」すると、辰濃さんはこう答えてくれました。

「良い文章を書く秘訣は「雑」の中にある。雑談、雑踏、雑木林‥」

辰濃さんの言葉は深く私の言葉に残っています。新聞記者は雑踏に出て、誰かと雑談するのも仕事の内かもしれません。あるいは雑木林の生態が複雑なように、現代の社会問題もまた複雑であり多様性を含んでいます。

例えば、コロナ禍における「東京オリンピック」。賛否両論を含めて、そこには政治・経済・社会問題‥様々な問題が複雑に入り乱れています。また、オリンピックだけではなく、最近はスポーツ選手の人権問題も表面化しています。

新聞はこの問題についての記事をどのように書くのでしょうか。大切なことは複雑な問題を無理に単純化しないこと。複「雑」から逃げないことだと思います。

(文責・ふくしま新聞店 福島達也)

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