新聞に掲載されている企業広告。
読んでいると自然と目に入りますよね。
最近SNSで話題になった新聞広告があります。殺虫剤メーカー「キンチョー」の新聞広告です。
広告タイトルは「いま、いいよね。一方通行の新聞広告」。内容は「新聞広告はあこぎなことしないから、安心だよ!」「「この広告見て、この商品を買いたくなったかどうか教えろ」なんて言わないよ!」‥などと続き、最後に「「へぇ、こんな商品があるんだ。今度買ってみよう」それだけで十分だよ」と締めます。
一見、インターネット広告への皮肉を込めて、紙媒体である新聞広告を褒め称えているように読めます。しかし、そこにはオチがあって紙面上のQRコードを読み込み、ウエブサイトを開くと「デジタル時代のプレミアムキャンペーン!」の文字が現れます。
キンチョーは前回の新聞広告もそうでした。
「もう どう広告したらいいのか わからないので」というタイトルで、紙媒体である新聞からインターネット広告へと誘導していたした。紙とネットの融合が見事で、結果としてキンチョーという企業のキャラクターを上手に表現しています。
最近、もうひとつ話題になった新聞広告に「さわかみ投信」があります。会長、社長、部長‥さわかみ投信の各幹部が、それぞれのメッセージが書かれた新聞広告です。新聞の一面に文章のみで構成された広告は、逆に読む側にインパクトを与えます。
その内容の一例を挙げます。タイトルは「飲食業、ならびに観光業の皆様へ」。「長引くコロナ禍で、とても大変な日々をお過ごしのことと察します しかし世界の株価は、そんな実体を無視して上がり続けている‥ 何かおかしいと思いませんか? 代表取締役 澤上龍」
自社商品の宣伝はありません。経済の実態とかけ離れて上昇を続ける、今の社会状況に疑問を投げ掛ける内容です。なぜこのような新聞広告を出したのでしょうか。
そのヒントはさわかみ投信のホームページにありました。その経営理念を読むと、さわかみ投信が、長期投信でいい社会をつくっていきたいのだと、わかります。
また、トップページに大海原に乗り出すような大船が描かれているように、さわかみ投信の投信信託の購入者を、いい社会をつくっていくための賛同者と捕えているのではないでしょうか。新聞広告はそのためのメッセージだったのです。
企業にとって新聞広告の掲載料は高額です。広告を出せば物が売れるという時代でもありません。新聞広告の費用対効果を回収するためには、紙面という限られたスペースで最大限の工夫をしなければなりません。
それはまるで、スポーツ競技に挑むアスリートのようにストイックです。
新聞広告に込められた企業努力に、これからも注目していこうと思います。
(文責・ふくしま新聞店 福島達也)